映画刀剣乱舞 黎明
すごく楽しみにしてました。第一作の公開が2019年? あんなに何度も劇場に通ったのは初めてだったし、舞台版で何度も見てたはずの三日月が良すぎて鈴木拡樹くんのFCに入ったのも映画がきっかけで。
※ここからは率直かつネタバレに配慮しない感想です。マイナスなこともたくさん書いてますので、未視聴の方、少しでもネガティブな感想を見たくない方はGo Backプリーズ。
もうね、声を大にして言いたい。
なんで脚本、靖子ちゃんじゃなかったん……??
お忙しい方なのは理解してます。あちこち引っ張りだこなんだろうなって。
小林さんじゃないから前回とは方向性を変えて、緻密な歴史トリックじゃなく舞台を現代にしてエンタメに振ったんだとしたらそれは正解だと思う。
あまりにも脚本が雑で、粗だらけで……正直、pixivにもっと出来の良い物語がいくらでもあるが?って思いました。
舞台、ミュージカル、花丸、活劇、戦国無双。数あるメディアミックスのシナリオはところどころ気になるところ、Not for meなところはあれど基本的にはとてもよく出来ていて。それに慣れているものだから、しかも1作目は素晴らしかったものだから、正直戸惑っています。
もちろん良かった点、これが見たかったんだありがとう!という点、それから前作から予算が大幅アップしたんだろうな~って感慨深いところは色々あって。Twitterで同様の意見をたくさん見ましたが、まさに減点方式なら『可』、加点方式なら5億点という感じ。
以下箇条書きにて。
ありがとう&ありがとう
- 政府刀として役人を従えている山姥切長義
その滲み出る気品、プライドの高さ、最高だよ……!!
- 三日月・山姥切国広・山姥切長義三つ巴の殺陣
最高が過ぎる。正直このシーンだけで見に来た甲斐があったと思った。殺陣が得意な面子、舞台版よりずっとずっと近い距離、はためく布&布。ここだけ延々ループして見ていたいくらい最高だった。
同様に廃墟?のアパートの廊下での山姥切国広 vs 三日月宗近も最高。殺陣が得意でお互いの呼吸を知り尽くした2人でなかったら、あのシーンはできなかったかも……と考えると尊いしかない。
- 酒呑童子の一味=都人に誅殺された罪なき人々
しんどいけど良かった。鬼であると討伐されたものが、実は罪なき人々で。第三者からみれば、女性や弱者関係なく皆殺しにしていく都人の方が鬼と形容するにはふさわしい。
ああ、こういう歴史に消されてしまった人たちを描くのが刀剣乱舞だよな、って思ってこの時点では脚本にすごく期待してた。
平安のスーパーヒーローとして描かれがちな安倍晴明が、権力者側の参謀的なキャラなのも斬新だし、見た目は道長と対極にみたいに爽やかなのもいい。まさか出番あれっきりとは思わんかったが(笑)、晴明様を使い捨てするのも珍しくて良いかもしれない。
- へっしーとギャル審神者
あらすじ紹介の時からさんざん弄られてきたこのコンビ。もうネタも出尽くしてこれ以上のものはあるまいと思ってたのに、想像以上に良かった。もっと見せて下さい。
さらっと水五訓(鑑賞後にTwitter漁って学習しました。ありがとうございます)出して来て教養あるところが垣間見えたり、仮の主が集まっているところでのコミュニケーション力やふとした優しさだったり。かと思えばギャルっぽく戦闘シーンを携帯で撮影しちゃったりしてて実弦ちゃん好きになるしかない。
高速道での事故シーンは迫力があって、ビクゥッ!ってなったし4DXで観てる人たちの心配してしまった。大丈夫? むち打ちとかなってない?
仮の主に対する長谷部の雑な対応も、あくまでも自分の本丸にいる主が1番なのも解釈に合う。それで別れるときに、実弦ちゃんの苗字が『黒田』だと知った時の表情……! 最高でしたよ。和田まーしーが長谷部で良かったって思いました。
黒田はそれほど珍しい苗字でもないし、全く関係がないのか、それとも本当に黒田官兵衛に繋がる血筋なのか、はっきりしないのがまたいい。
こういう余白を残すようなストーリーが描けるのに、なぜ本筋の描写がああなのか。
- 山姥切長義と各務くん
ほとんど絡みが見れなかったのに、別れのシーンであの長義が「覚えておいてはやれないけど、世話になったな」(セリフうろ覚え)って優しい顔で言うのがさあ!! 描かれてはなかったけど、この2人の間にも色々あったんだろうなって想像できてしまってうるっと来ちゃいました。このシーンが最大かつ唯一のうるっとポイントだった。
だからこういう描写ができるのに、なぜ(以下略)
- 各本丸刀剣男士大集合シーン
これ嫌いな審神者いないでしょ!?? 1作目の終わりに刀剣男士集合シーンがあったから、正直今回も期待はしてたけど。してたけど前回みたいに座ってるだけじゃなくて、立ち回りがあって、スケジュールの関係なのか別の場所に顕現した男士たちがいて。期待してたものの100倍くらいのものを見せていただきました。
染鶴と健鶴が揃ってるだけで「ギャーーーー!!」なのに、まさか最後の最後にミュ石切丸さん来るとは思わんやん?? あの瞬間、映画館がざわめいて座席が揺れたの面白かったです。
鶯丸と大包平が揃ってたのも良かったなあ。鶯丸はステのキャストさんがああなってしまったので映画版キャスト一択だったのだとは思いますが、あちらも炎上はしたけど映画版鶯丸大好きだったので2人が並んでるの感慨深かったし違和感なかった。
映画と言えば、一作目で登場以降ずっと実装が待たれているのに叶っていない倶利伽羅江がいたのも嬉しい。ちゃんといる……!
短い出番の中でもそれぞれの個性があって、むっちゃんなんてむっちゃんクラスタにはたまらないだろうなあ~……でも銃声は不味くない??と思ったり(笑)。
かなりの人が「脚本はいまいちだけど最後の刀剣男士出てくるところで全て帳消し」って感想を持っているみたいですが、これ……審神者だからこその感想ですよね。各キャラクターに思い入れのない、刀剣乱舞初めましてのお客さんにとっては「脚本イマイチだったなー」だけの印象で終わりません?
- 殺陣のキャラ付け
各刀剣男士の個性とか、前とは別本丸の個体であることの印象付けとかがしっかりされてて良かったです。
個人的に好きだったのは一期一振。本田さんは初日舞台あいさつの時「とにかくロイヤルになるように心がけた」っておっしゃってましたけど、殺陣は雑というか荒々しい印象で。舞台の一期一振にはそういうイメージはなかったので、物腰は柔らかだけど存外荒っぽい一期一振という新しい一面に昂ぶりました。
あと堀川君。速くて鋭くて、障害物を利用して他の男士と連携して戦う様が最高にかっこいい。
気になった&それはどうなのポイント
- 伊吹とまんばちゃんの関係
で、結局何がどうなって2人は主従だったの? 何があったの?
全てを描いて欲しいわけじゃないけど、何もお出しされていないし何もわからないのでクライマックスで伊吹がまんばちゃんにかける「お前なら」の言葉が薄っぺらすぎた。どういう経緯があって、それだけの信頼関係が築けた? 2人だけで分かり合わないで欲しい。観客は置いてけぼりですよ。
- 琴音ちゃん周り色々
刀をしまうケースが必要ってことで軽音部(?)にしたのも、ヘッドホンしててそれが聞こえてしまう物の声を遮るためなのも、それを友達がくれたのも、上手に盛り込んだ設定だなって思ったんですよ。なのになんで……
・友達と別れたの夕方だったのに、急に夜になったね? バイトでも行ってきたんか? 秋の日はつるべ落としか?
・ノイズにしか聞こえてなかった物の声がはっきり聞こえるようになる、ならいい。なぜ突然「わかるかもしれない!」で念い(『おもい』はこの表記なんだそうです)の糸が見えるようになるんだ。
・勧善懲悪、悪は悪で善は善!ってならないのが最近の特撮だと聞いた(既に映画版のことは特撮扱い)。だからと言って健君、伊吹君と繰り返される話せばわかる、斬っちゃうなんてひどいムーブがもう面倒。この辺のやりとりが冗長で飽きました。こういうの観に来たんじゃないんだけどなーって。
・酒呑童子/伊吹君との対決シーンで、大きな転機になるのは琴音ちゃんの声掛け……まんばちゃんと三日月はそれを見ているだけ……フゥン
- 伊吹くん/酒呑童子周り色々
綺麗なお顔で刀剣男士としても全然やっていけそうですよね。華もあるし。ちょっとミュ南泉の武本くんと感じが似てるなって思って見てました。
・三日月が消えゆくまんばちゃんに何もできず、近付くことすらできない状態(そんなに我武者羅にもみえなかったんだよな……)で酒呑童子を後ろからさっくり仕留める頼光さん強すぎん?
・家庭内暴力~からの弟喪失~ありがち~~~もうそういうのいいや~~
・事故に遭った弟君、状態がきれいすぎ&流血少なすぎですぐに救急車呼べば助かるのでは?レベル。即死状態を示唆するのなら、あえて顔は写さないとかもうちょっと血の良増やすとかしたらいいのに。
・CGが安っぽすぎて、終盤の酒呑童子の真ん中にきれいなお顔が出てきたとき笑っちゃった。役者さんが悪い訳じゃない。
・CGを使いたくて書いた脚本なのかな?ってくらい多用されるCG。その度に醒めていく私の心。
- なんで源氏兄弟は空港に……?
兄者にちゃっかりくっついて顕現した膝丸かわいかった。それはそれとしてなんで京都→東京の移動に空港使うんです? 関空か伊丹かわからないけど、空港行って搭乗するまでの時間で新幹線で東京到着するでしょ? だいたい空港だとセキュリティチェックあるのに刀どうするんですか?
空港での立ち回りはかっこよかったけど、それが気になりすぎて。兄者が飛行機乗ってみたい!って駄々こねたんだったなら納得しかないが。
前回から格段に予算増えたんだろうな~っていうのはわかる。使いたいのもわかる。でもこっちは刀剣乱舞を見に来てるんですよ。ハリウッド並みスケールとか言われてたけど、どう見たって安っぽいし溢れ出る特撮感。しんどい。
1作目はCGも使いつつ、現場で作業監修してたおじいちゃんがはしゃいじゃうくらい本物の火を使ったりして、そういうリアル感こそが良かったんだと思うですけど。
- トーハクの展示室
外側は本物の東博、中の展示室は栃木の博物館だそうで。だいたい三日月の展示は金工の部屋で他の刀剣と同じことが多いですが、まあ国宝の特別展という設定だし一振りだけ他の美術品と一緒に飾られることもあるかなあ、と。それはいいんです。
せめて巡回ルートを左回りで撮影できませんでした? 東博だと、まあ逆に行く人もいるにはいるでしょうけど大抵みんな左回りで見てると思うんですよね。もうそこが気になってしまって、あ、これトーハクじゃないもんな、でスンッってなっちゃう。
撮影の時には一般の方入れてないんでしょうし、ルート逆にすることくらいできなかったのかな……。
総評
個々の刀剣男士、殺陣なんかは最高に良かった。ただ、このキャスト予算を集めておいてこの出来上がりは残念だなあと思います。
観て良かったとは思うけど、1作目ほどは通わないと思うし(まだムビチケ使ってないのでその分は行かなくちゃ)、人にも「面白いから見て!」とは薦めづらい。1作目ほどのロングランは見込めないのではないかな。そうなるとこれ以上の続編も難しいでしょうね。
……せめてギャル&へっしーと長義&各務のスピンオフ短編でもできないかなー。今一番見たいのそこです。